1.本研究の目的 高齢者の記憶の信念は、不正確な自己の記憶能力のモニタリングに関係があり、高齢者の記憶行動にマイナスの影響を与えている可能性が指摘されているが、詳しいことは明らかでない。そこで本研究では高齢者の記憶の信念について、1)日常的な記憶行動や記憶課題の成績との関係、2)認知に関する暗黙理論との関係、3)社会情報との関係、この3点から調査する。調査結果をふまえ、高齢者の記憶の信念に影響している要因や信念の特徴を若年群・中年群と比較することによって生涯発達の観点から総合的に考察し、その問題点を明らかにしたい。 2.平成22年度の研究成果 本年度は当初予定していた3つの目標を達成した。1つは、平成21年度に作成された質問紙のデータを分析し、最終的な質問項目の選定を行った。2つめは、研究参加者の認知能力測定のための簡易的で、かつ、測定精度が比較的高い記憶・認知テストを調査し、本研究で使用する複数のテストを選定した。具体的には、欧米の先行研究で有用性が報告され、かつ、日本で入手(開発)可能であるという条件を満たす、記憶の信念と日常生活と関連が考えられる認知能力の測定項目として11種類のテストを設定した。また、記憶テストとしては3種類を設定した。まず、本調査に備え、認知テストの実施方法を確認するため予備調査を行い、高齢群と若年群の実施方法を各々策定した。その後、若年群、高齢群の2つの盤代に対して記憶・認知テストを併せた調査を行った。高齢群は計103名(うち男性62名)、若齢群は計72名(うち男性23名)の合計175名分のデータを収集し、現在集計作業中である。中年層については、来年度の実施方法を見極めるため予備的に4名分のデータを収集した。
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