研究課題
本研究課題において前年度までに、松果体ホルモンであるメラトニン存在下で海馬CA1シナプスにおける長期増強の大きさが抑制されることと、その抑制には細胞内の一酸化窒素カスケードへの作用が関係することを電気生理学的手法により明らかにした。これらの結果を受け平成23年度は行動実験に着手し、メラトニン分泌の多い夜間と分泌の少ない日中とでラットの学習成績に差が見られるかどうかを、海馬依存性の空間学習課題の一つである物体再認課題を用いて検討した。物体再認課題における物体には、これまでの先行研究の多くで用いられているような任意に選ばれた物体ではなく、世界で広く流通している玩具ブロックを組み合わせた再現性のある物体を用いた。訓練試行では同一の物体を2つ設置した装置内をラットに探索させ、その後のテスト試行時には訓練試行で呈示した物体のうち片方を新奇物体に変え装置内を探索させた。新奇物体を探索した時間が総探索時間に占める割合を弁別指標として算出し学習成績として評価した。その結果、訓練試行から1時間後に短期記憶テストを行った際には、どの時間帯においても既知物体よりも新奇物体を長く探索していた。しかし、訓練試行から24時間後に行った長期記憶テストでは、明期前半群でのみ既知物体と新奇物体の探索時間に差がなく、すなわち両者を弁別できていなかった。訓練試行時の総探索時間は各群で同程度であったため、長期記憶テスト時に明期前半群でのみ長期記憶が保持されなかった結果が活動量の違いによるものではなく、口内の時間帯に起因すると考えられた。以上の結果から、記憶の符号化に関してはすべての時間帯において可能であるが、明期前半に実験を行った群では長期記憶の保持が困難であったことが示唆された。
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Journal of Physiological Sciences
巻: 61 ページ: 421-427
DOI:10.1007/s12576-011-0159-6