研究概要 |
エラー反応の発生メカニズムの一つと考えられている「行動モニタリング機能の一過性低下」は,エラー反応の発生以前から生じている可能性が高い.実際にこの考えを支持する知見が報告されている.エラー反応そのものよりも,それ以前の試行での脳内情報処理を調べるほうが応用研究に繋げやすい.本研究では,エラー反応の先行試行で事象関連電位(event-related potential:以下ERP)と機能的MRIを測定し,関連成分同定とその発生源を明らかにすることを目指した. 平成21年度では,現有32チャネル脳波計とfMRIとの同時記録ができるシステムを構築した.その一方で,128チャネルデジタル脳波計を用いて,行動モニタリング機能低下に関与する脳活動を探った. 先ず交互反応課題を用い,注視点上下に規則的に交互提示される視覚刺激を,低頻度確率(5%)で裏切るルアー刺激を挿入しエラーを誘発した.ルアー刺激先行試行での反応時間とERPを測定した結果,両者にルアー試行結果を予見する特徴を見出した.本課題ではエラーよりもむしろ正反応が予測できることを示唆するものだった. エラー反応そのものと,反応結果に対する予期の研究では,情動・動機づけプロセスを無視することはできない.そこで別の実験では,意思決定課題中に呈示したフィードバック信号への情動予期を反映するstimulus-preceding negativity(SPN)と,フィードバック信号に誘発されるfeedback-related negativity(FRN)を測定した.その結果,自分の意思で行動選択できる条件では,意思決定できない条件に比較して,SPNは大きく発達した.同じ課題にfMRIを適用した結果,SPN増大の発生源は大脳基底核と島皮質であることが示された.今後は同様の課題でERPとfMRIの同時記録を行うことになる.
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