研究概要 |
平成22年度では,前年度の意思決定課題で得た脳波データを再分析に供し,行為と結果の随伴性(action-outcome cont ingency: AOC)のさらなる検証に努めた.自分で反応選択の意思決定ができるChoice条件ではAOCは強くなる一方で,意思決定できず受動的に結果だけを知らされるNoChoice条件ではAOCは低い.Choice条件は右手第2指と第3指で二者択一の選択を行うギャンブリング課題であったが,NoChoice条件では刺激に対して第1指のボタン押しを行うだけだった.これらの条件はランダムに提示され,選択反応の2.5秒後に金銭獲得・損失結果を視覚的にフィードバックした.フィードバック信号への情動予期を反映するstimulus-preceding negativity (SPN)は,Choice条件で大きく,特に右前頭部で顕著だった.これに対応して,負のフィードバック信号に誘発されたfeedback-related negativity (FRN)もChoice条件で大きかった.同様の課題を用いたfMRI計測では前部帯状回(anterior cingulate cortex: ACC)に顕著な賦活が認められ,FRN増大の原因と推察された. さらに今年度は,脳波とfMRIの同時計測時に眼球運動も記録できるか検証した.眼球運動のモニタは脳波測定では不可欠であり,サッカード眼球運動等の記録は,脳波・fMRI同時計測研究を推進させることにつながる.実験の結果,サッカード由来の眼電位変動は,fMRI由来のアーチファクトによって観察困難であったが,オフラインでノイズ除去することができた.サッカード眼球運動の停留時点で脳波を加算平均すれば,視覚野由来のラムダ反応が観察されるため,現在,fMRI信号との対応付けを行っている.
|