食べ物を一定の時間(数十分程度)食べ続ける場合、最初のうちは速いペースで食べるが、徐々に食べるペースが低下して行く。この数十分間の実験時間を実験セッションと呼び、そこでの食べるペースの低下をセッション内減小と呼ぶ。本研究課題では、栄養に関する過去の経験に基づく「条件性飽和」がセッション内減少に及ぼす効果を検討し、健康な摂食量を実現するための食行動のコントロール法の再検討を行った。 平成22度は、ラットを対象とした実験を行い、過去の栄養の経験が、現在のセッション内減少パターンに影響することが示された。具体的には、ラットに風味Aと濃い柴養、風味Bと薄い栄養の関係を学習させた後、中間の濃度の栄養液に風味Aを付加したものあるいは中間の濃度の栄養液に風味Bを付加したものを摂取させ、リッキング行動のセッション内減少を調べた。その結果、現在の栄養の濃度が同じでも、過去に濃い栄養と結びついた風味Aが付加されているに摂取量が少なくなることがわかった。また、セッション内減少パターンも風味の影響を受けた。 また、成22年度には人間を対象とした実験も行い、カロリーの高い液体食物を摂取した後にポテトチップを食べる場合と、カロリーの低い液体食物を摂取した後にポテトチップを食べる場合とを比較した。その結果、ポテトチップの摂食量にも、ポテトチップの摂食行動のセッション内減少パターンにも差がないことが示された。この結果は、直前に摂取したカロリー濃度の違いが、直後の摂食行動に影響しないことを示すものである。
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