渇動因下にあるラットを被験体として、以下の諸研究を実施した。なお、初年度であるため、本課題の直接的成果はまだ学術誌に掲載されていないが、過年度に実施していた関連研究(「回転かご走行によって生じる味覚嫌悪学習における隠蔽効果」「水泳によって生じる味覚嫌悪学習の獲得と遂行に及ぼす水泳単独経験の効果」)について、学術誌に論文を投稿し、本年度中の修正(再吟味)を経て、掲載されたことを付記する。 (a)味覚溶液プールでの水泳によって当該味覚への嫌悪学習が生じることを複数の実験で確認した。味覚と水泳運動によるエネルギー消費またはストレスが連合したと想定される。 (b)慢性的に与えていた嗜癖性薬物(カフェイン、ニコチン、アルコール)の剥奪時に呈示した味覚溶液に対して嫌悪学習が生じることを実証し、運動性味覚嫌悪学習との類似性を相反過程理論の予測と照らし合わせて考察した。嗜癖性薬物の不快な退薬症状と味覚が連合したものと考えられる。薬物乱用者の治療に関する示唆を与えるであろう。 (c)回転かご走行や水泳によって味覚嫌悪学習が生じる原因がエネルギー消費やストレスであれば、他のストレス性の運動(例えば、同種間の攻撃行動)によっても味覚嫌悪学習が生じるはずである。同種間の攻撃行動による味覚嫌悪学習の可能性を2つの実験で検討したが、いずれも結果は否定的であった。 (d)回転かご走行や水泳によって味覚嫌悪学習が生じる原因がストレスであれば、報酬量減少のような不快状態によっても味覚嫌悪学習が生じる可能性がある。そこで、慢性的に与えていた蔗糖溶液の濃度を突然低下(報酬量減少)させ、このときに呈示された風味に嫌悪学習が生じるかを検討した。しかし、実験結果は否定的であった。
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