渇動因下にあるラットを被験体として、以下の諸実験を行った。なお、平成22年度の成果については論文掲載に至っていない。現時点では、査読誌に掲載のため引き続きデータを収集中であるか、論文を執筆中という状況である。なお、前年度(平成21年度)の研究成果については、1篇が査読中で、もう1篇は査読後の修正稿が再審査されているところである。 (a) 回転カゴ走行によって生じる味覚嫌悪学習について、2系統のアルビノラット(Wistar系とSprague-Dawley系)を用いて、系統間比較を行ったところ、4基本味のいずれに対しても両系統間で同程度の嫌悪学習が生じた。なお、両系統とも2つの繁殖業者から購入して、業者間での違いの有無についても検討したが、この要因の効果も見られなかった。回転カゴ走行によって生じる運動性味覚嫌悪学習の頑健さが確認できたといえる。 (b) 走行運動と水泳運動はともに味覚嫌悪学習を生じさせるが、この2種類の運動が同じメカニズムで味覚嫌悪学習を引き起こしているかどうかを交叉耐性法で検討した。具体的には、事前に与えた走行経験あるいは水泳経験が水泳によって生じる味覚嫌悪学習を阻害するかどうかを調べた。しかし、本実験では水泳によって生じる味覚嫌悪学習そのものが弱く(原因不明)、これらの先行処置の効果を吟味するに至らなかった。 (c) 回転カゴ走行によって生じる運動性味覚嫌悪学習に及ぼす直前走行の効果を検討した。直前走行は運動性味覚嫌悪学習を阻害することが明らかとなったが、それは、走行ストレスの短期馴化によるものではなく、より長期的な学習阻害効果であることが確かめられた。 (d) 回転カゴ走行によって生じる運動性味覚嫌悪学習が、背景文脈によって制御されることを実証した。背景文脈への単純な条件づけ(背景文脈嫌悪)が味覚溶液摂取に影響している可能性と、背景文脈が味覚→運動の連合学習を高次制御している可能性について吟味し、その両方のプロセスが関与していることを明らかにした。
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