平成21年度の予備調査により明らかとなった、教師の人間関係上のトラブル、特に児童生徒による課題非従事行動への対処方法と相関関係にある意識や行動の傾向について、分析の結果を口頭発表ならびに論文として公表した。当該発表および論文では、即興劇の分野で用いられる「フォーカス(注目の対象)」という概念を援用して、課題非従事行動を「フォーカスが割れる」事態と見なし、それを収束させる統制行動を、「割れたフォーカスを一つに戻す試み」と見なした。そして、フォーカスへの対処方法として即興劇の分野で挙げられている三つの手法に対応させて、統制行動を「フォーカスを取る:課題非従事行動の中止と教師(教材)への注目を直接求める」「フォーカスを共有する:課題非従事行動を一時的に容認する」「フォーカスに入る:課題非従事行動に一時的に積極的に参加する」の三つに分けて調査、考察を行った。結果を端的に述べるなら、若手教員においては、自己効力感の高い(有能だと自負している)教員ほど、課題非従事行動を直接制止して教材内容等への注目を求める(フォーカスを取る)傾向が強いことが示唆された。若手教員は総じて、それを駆使しうる者の間では経験的に有効性が知られている「課題非従事行動を一時的に容認し、時には積極的に参加しさえする」ことでかえって迅速・円満に課題非従事行動を収束させる手法(フォーカスを共有する・フォーカスに入る)をとらない傾向も示唆されたため、自己効力感の高い若手教員ほど、課題非従事行動に対して「注意してばかり」「叱ってばかり」になる可能性が示唆された。 さらに、若手教員だけでなく全世代の教員に調査対象を拡大するため、区市町村レベルの地方自治体での質問紙調査を実施した。350人ほどの回答を得て、現在統計的な分析を実施中である。 また、次年度以降の研修プログラム作成の参考資料を収集した。
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