平成22~23年度に実施した全世代の教師を対象とする質問紙調査の分析により、本研究が注目している「フォーカス(児童・生徒の注目の対象)に応じて臨機的に教授行動を修正する」ことを実際に用いる頻度が高いのは職務上の失敗を恐れる傾向の強い(達成不安を強く持つ)教師である、との可能性が示唆された。この傾向が、失敗を恐れるゆえの、課題非従事行動に対する不作為・迎合である可能性は無視できないが、適切な介入のタイミングさえつかめれば、時に「名人芸」とも評される児童・生徒のフォーカスに応じた臨機的な対応ができるようになり、彼らの達成不安の克服に寄与しうる可能性が明らかとなった。 上記の傾向に加えて、平成21年度に実施した初任者対象の調査で明らかとなった「自己効力感の高い教師ほど児童・生徒のフォーカスに応じない傾向」を視野に入れ、これら二つの傾向に対応した教師教育で実践可能な演劇的ワークショップの具体的な活動を提案した。また、その活動を実際に経験している教員養成学部学生への質問紙調査により、それらの活動の有効性を高めるための環境整備として、「子どものつぶやきに耳を傾ける」と通称されるよく知られた授業技術が課題非従事行動への対処と通常の授業技術の接点であることを指摘した。 一連の成果は、冊子体の論文集として残した。また、下記URLほかで公開を準備中である。 http://www.u-gakugei.ac.jp/~yamadama/papers/kaken21530791.pdf
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