研究概要 |
明治期のグラスゴウ大学日本人留学生のうち,(1) モリ・イガこと広瀬常, および(2) 荘田泰蔵の留学中の勉学と生活, (3) 元お雇い教師ヘンリー・ダイアーによる日本人留学生支援活動を分析するための予備的考察としてダイアー先行研究をめぐって考察し,以下の諸点を明らかにした。 (1) については,①氏は日本人唯一の女子留学生であり,②1898年度に病理学および細菌学を履修。③ ただし, 自分の氏名, 住所,年齢,父の氏名と職業も偽って登録しており,素性が判明しない。 (2) については,1911年に入学登録し,数学,自然哲学,化学,工学,造船学などを履修,1916年に理学士号を取得した。②グラスゴウ駐在名誉日本領事A.R.ブラウンの仲介で,デイビド・ロウアン社などで実地修業を体験,③留学中,オートバイ,ヨーロッパ旅行などを楽しんだ。④1915年度冬期には,ロンドン大学キングスカレッジに聴講生として,電気工学,冶金学,数学を学んだ。⑤1988年にはグラスゴウ大学名誉博士号が授与された。 ⑥1996年には,荘田家からの基金をもとに,航空宇宙工学システム荘田講座,荘田記念講義,航空宇宙工学を専攻する最優秀学生1名に贈られる荘田賞が,創設された。 (3) については,日本におけるダイアー研究の成果と動向を考察し,①日本におけるダイアー研究文献は 141点を数える,②ダイアー関心の高まりのなか,研究文献は増加傾向にあり,2000年以降はのべ69点にのぼる。③研究主題は,お雇い教師,日本工学教育の推進者,帰国後における日英交流の推進者,日本研究者,教育および社会改革者としてのダイアー研究に大別されるが,このなか,帰国後に日本見聞を母国に伝え,日本経験をもとにグラスゴウ教育改革を先導したほか,グラスゴウ日本人留学生への支援活動がとくに注目される。 * 加藤詔士は加藤鉦治の筆名。
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