本研究の目的は、デューイ講義ノートと近年のデューイ研究の動向を踏まえ、実験主義以降のデューイ思想にヘーゲルがどのように継承されているか、ヘーゲルと進化論的生物学がどのように宥和されたのかという問題を、「観念論の自然主義化」という観点から解明しようという点にあった。 21年度の実施計画としては、第一に、デューイの演習・講義ノートを入手し、実験主義の形成過程とヘーゲル的観点との相克について実証的に分析することと、第二に、デューイの講義ノートを第一次資料とするデューイ研究をレビューすることにより、ミシガン大学、シカゴ大学、コロンビア大学時代以降の教育思想の中に「ヘーゲル的観点の残滓」と継続的な影響、またダーウィニズムの反映について再評価することであった。 第二の点については、コロンビア大学、またウィスコンシン大学にて近年のデューイ研究の動向に関する資料を入手しレビューすることができたが、学会・研究会などでの口頭による成果発表のうち関連する研究もいくつか知られており、引き続き入手と分析に努めたい。第一の点については、南イリノイ大学のデューイ研究センターへの訪問の機会をもたなかったため、デューイ講義ノートのうち、倫理学・価値論に関するコロンビア大学時代のものは入手することができたものの、ヘーゲル哲学に関する箇所の資料収集については断片的なものにとどまった。また数ヵ所の大学図書館に散逸され、それぞれファイルされているものを整理・統合しつつ把握する必要があることが判明した。さらに本研究のテーマである「ヘーゲル的残滓」についての分析は、デューイが当時のどのようなタイプのヘーゲル研究の状況下にあったかというより詳細な視点からアプローチする必要性も判明した。
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