本研究の目的は、デューィ教育哲学の展開についての一般的な解釈の見直しを、デューィの各種講義ノートや演習の記録、同時代の研究者との書簡などの第一次資料から見直し、「ヘーゲル哲学」からの影響を生涯において追跡・確認し、加えてデューイに思想的展開をヘーゲル的残滓」と「ダーウィン的な進化論的生物学」との融合の帰結として捉え直していくことにあった。22年度の実施計画としては、第一にデューイに影響のあった19世紀の米国の新ヘーゲル主義、セントルイス学派のヘーゲル研究の水準と特徴を精査することであり、第二に同じくデューイに影響のあった進化論的生物学について、T.H.ハクスリーとその周辺の議論を収集し精査することであった。 前者については、ウィスコンシン大学を拠点に、州立歴史博物館、シカゴ大学附属図書館、南イリノイ大学デューイセンター、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ附属図書館にて、資料を収集した。特にデューイのシカゴ大学時代の講義ノートについては、南イリノイ大学におけるThe Joseph Ratner Papers and Collection of John Deweyを入手することができ、これにより1896~97年の「ヘーゲルの論理学」「ヘーゲル精神現象学の覚書」の内容が明らかになった。その一部は研究成果として発表している。また米国の新ヘーゲル主義の潮流については、ウィスコンシン大学図書館において、セントルイス学派の中心人物であるハリスが編纂した哲学雑誌、Journal of Speculative Philosophyの一部をマイクロフィッシュ版にて閲覧、入手することができた。後者についてはニューヨーク・パブリック図書館などで一部の資料を入手したが不十分であり引き続き収集にあたるとともにそれらの精査に努める予定である。
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