本研究の目的は、フランス第三共和政初期の教員養成改革について、その法制(法律・政令・省令等)の整理を行なうとともに、改革の立案推進主体の言説を分析し、その特質を明らかにすることにある。これにかかわる従来の研究は、初等師範学校の歴史と改革に関するもの、初等教員の任命(採用)改革にかかわるものに二分される。本研究では、これら二つの側面を統合的にとらえるとともに、改革の立案推進主体(とくに初等教育局長: F.ビュイッソン)の言説を分析することをめざした。その結果、推進主体の意図するところとして、初等師範学校の改革(とくに師範学校附属小学校での教育実習・教育実習生の演習の導入など)と任命制度の改革を統一的に行なおうとしていたことが明らかとなった。この統合的な改革は、その後の第三共和政初等教員養成システムの基盤となったのである。
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