平成23年度は本研究の最終年度であった。前半は東日本大震災の影響で困難な状況にあったが、後半は学会参加及び成果発表、史料調査、国際情報交換、の3つを柱として、以下のような研究活動を積極的に展開した。 1、国内外の学会参加及び成果発表:8月24日~27日の4日間、エストニア・タリン大学で開催された欧州日本研究学会(EAJS)国際会議へ初参加し、最新の日本研究成果を確認するとともに、幕末維新期の教育・思想史研究の重要性を実感した。9月7日にニューカッスル大学で開催された日本史料専門家欧州協会(EAJRS)2011国際会議へも参加した。国内においては、2012年3月17日に日本英学史学会・東日本支部・沼津大会で特別講演「沼津と英学-新しい市民層の創出-」と題して、コモンサイエンスが西周の造語であり、沼津兵学校における教育実践を通して、西周が我が国における新しい市民層の創出を目指していたことを述べた。 2、英国における史料調査:8月30日~9月6日。コモンサイエンスは英語圏においては、「一般科学」として科学の普及に伴い使用されている。オックスフォード大学において、「一般科学」ならびに「化学ニュース」の検索を実施。また、コモンを紐解く鍵となるコモンルーム設置の背景として、学生の意識変化と社会変革を許容する時代の出現があり、この時代の息吹が西周の学問観形成に繋がったのではないかと考えられる。 3、国際情報交換:本研究課題について、英国日本研究者との情報交換を積極的に行った。彼らは、西周のコモンサイエンスについて、幕末維新期における我が国の西洋的学問観の形成の方途として関心を示した。また、コモンについて正確に把握するために、資料館、博物館、図書館など、地域の研究者とも意見交換を行い、近代から現代へ引き継がれた、コモンが持つ隠された階級性に辿り着いた。
|