■本年度は、これまでの研究成果を『「いい文章」ってなんだ一入試作文・小論文の歴史』(ちくま新書、2010年)にまとめ、日本近代における文章評価の枠組みとその系譜を辿った。特に、文章を<優/劣>で評価するとはどういうことなのか、その評価はどのような基準にもとづいて為されているのかという観点から、それぞれの時代や社会状況における文章評価の枠組みを問い直した。今後の研究資料に関しては、旧帝国大学図書館に保存されている資料を中心に収集し、高等教育におけるリテラシー能力の育成方法などを把握することができた。 ■読売新聞社が第12回・図書館総合展(2010年11月24日~26日・パシフィコ横浜)で開催した「明治の読売新聞文学パネル展」の監修を担当し、明治の新聞小説に関する知見を深めるとともに、日本人のリテラシー能力育成と新聞というメディアの相関性について考察した。この問題はまだ構想段階にあり、今後、資料収集などを行っていく必要があるが、次年度以降の研究テーマのひとつに加える予定である。 ■その他、周辺的な研究としては、昭和20年から27年あたりにかけて、GHQ/SCAPが占領していた時代に刊行された印刷物(特に雑誌)の研究につとめている。なかでも、地方都市で刊行された文化雑誌の分析に力を入れ、地方における戦後の復興とそこから沸き起こる表現や言論が戦後社会の新しい価値観を創出していく様子を追っている。すでに「『四国春秋』総目次+解題」などが完成しており、今後、活字化していく予定である。
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