研究概要 |
本年も研究実施計画に基づき、Fr.フレーベルの「教具(遊具・作業具を含む)」に関する未刊行資料が保存されているベルリンの「陶冶史研究図書館(BBF : Bibliothek fuer bildungsgeschichtliche Forschung)保管の通称BN資料、並びに「ベルリン国立図書館(Staatbibliothek zu Berlin)」所有の通称KN資料の調査、収集を行いフレーベル教具論の体系的考察を図った。特に、本年は「ベルリン国立図書館」所有のNachlass(遺稿)を再度調査し、フレーベル教具論の端緒に関する資料(書簡類)を吟味した。また、フレーベルの後期に展開される「運動遊戯」や「作業具」に関する資料の収集にも努めた。具体的にはNachlass(186;K.56/57)を中心とする書簡54通の収集とその解読である。同時にフランスのペスタロッチー、フレーベル研究者M・ソエタール アンジェ大学名誉教授からの助言でスイス時代のフレーベルの活動に関する「遺稿」が保存されているベルン古文書館所有の資料調査の必要があることが判明した。 全体的に、現時点での判断(成果)としては、Fr.フレーベルの「教具」体系は、乳児期、幼児期,児童期の発達段階に即応して構想され、具体化されているが、その構想、具体化の時期は、必ずしも発達段階に即応して、順序良く、構想され、具体化されたのではなく、時期的には確定が困難であるが、スイス・ブルクドルフでの教育実践をへて1840年の「幼稚園」開設期の「恩物」中心から、晩年の『母の歌と愛撫の歌』による乳幼児期の「教具」、そして、フレーベルのスイスでの教育実践を引き継いだW・ミッテンドルフ等の「運動遊戯」等の提示がその全体的構想の柱となると想定される。同時に「恩物」,『母の歌と愛撫の歌』の各々に、重層的に「運動遊戯」が組み込まれている点も考慮すべき点である。
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