研究概要 |
本研究は、Fr.フレーベルの創作的かつ実践的な活動としての「教具(遊具・作業具を含む)」の全体像を未刊行資料(遺稿を含む)の収集と解読を通じて明らかにし,その体系化を図ることを目的にしている。本年は,平成21年度、22年度の両年にかけて、ベルリンの「陶冶史研究図書館(通称BBF)」保管のフレーベル遺稿(通称BN資料)、「ベルリン国立図書館」所有の通称KN資料、並びに,バート・ブランケンブルクの「フレーベル博物館」所有の通称BIM資料(遺稿)から収集した「教具」に関する諸資料の解読・分析からその体系化を完成させた。 1 フレーベルの「教育遊具」は、第一に、子どもの成長・発達を考慮して考案されており、具体的には(1)家庭における「教育遊具」(2)キンダーガルテンにおける「教育遊具」(3)媒介学校における「教育遊具」(4)基礎学校における「教育遊具」に区分される。この観点は,フレーベルの「媒介の法則」が基礎となっている。第二は,フレーベル教育遊具は四つの形を保持し、それぞれに生活形式、美的形式、認識の形式を示している。これにはフレーベルの「球体の法則」が基礎理論となっている。これらは「恩物」と「作業具」としてわが国に紹介されているものであるが,媒介学校での拡張第二遊具と,第二系列遊具は紹介されていないし、構想として残された第七恩物から第十恩物は全く伝えられていない。 2 フレーベルの「教具」は上記1の発達段階を考慮して考案されているが、晩年のフレーベルは乳幼児期の母-子関係を重視しその身体的接触を図る育児書『母の歌と愛撫の歌』(1844年)を編集・刊行した。 3 上記育児書には『メロデー(楽譜)』本が添付され、「共に歌う」「共に活動する」『運動遊戯』が重視され,具体的には『百の歌』(1844年)が作られている。このようにフレーベルの「教育遊具」は(1)『母の歌と愛撫の歌』(2)『恩物と作業具』(3)『百の歌に代表される運動遊戯』の三者から構成されている。
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