平成21年度は、近年急激な成長を遂げつつある産学連携について、主に、その成長要因についての調査研究を行った。このために、まず、2003~2007年度に実施された文部科学省の「大学知的財産本部整備事業」に採択された33大学から「大学知的財産本部整備事業終了報告書」を入手するとともに、これら33大学の産学連携に従事する教職員に対して、産学連携の成長の指標やその要因に関するアンケート調査並びに2大学についてヒアリングを実施した。この結果、「共同研究の増加」や「受託研究の増加」が産学連携の成長の指標として最も適切であると捉えられており、また、成長要因としては外部資金獲得の必要性や産学連携に関する補助金の増加など、金銭的な要因が最も大きいと考えられていることが判明した。これらのアンケート結果を前提に、「大学知的財産本部整備事業終了報告書」に記載されたデータを使用して、共同研究の件数や金額の増加を目的変量として重回帰分析を行ったところ、大学知的財産本部整備事業費という国の補助金が誘引となって大学の意識を高めたこと、また、専任教員が産学連携推進に取り組むことができる体制を構築していくことが重要であることが示唆された。一方、この大学知的財産本部整備事業費の主な使途としては、当初から、知財に詳しい企業等出身者等の人件費が想定されていた。しかしながら、企業等出身者の人数が、共同研究の件数や金額の増加にあまり寄与しておらず、企業等出身者の業務内容に相違があり、必ずしも人数が増加したからといって、産学連携が活発化するとはいえないということが推定された。すなわち、内部的な事務処理に多くの時間を割くのではなく、共同研究の組織化や技術移転の体外的な売込みなどの業務が産学連携活動を活性化させる要因と推定された。 これらの研究成果を通じて、大学における産学連携活動のあり方の検討に資することを目指している。
|