研究概要 |
平成22年度前半は、平成21年度に実施した、文部科学省の「大学知的財産本部整備事業」(平成15~19年度実施)に採択された33大学の産学連携に従事する教職員に対するアンケート調査や当該事業成果の分析結果を取りまとめた(論文発表及び報告書の作成・印刷・配付)。研究内容は、主に、産学連携の成長の指標やその要因等である。アンケート結果から、産学連携の成長の指標として最も適切であると捉えられている「共同研究の増加」(件数)を目的変量として重回帰分析を行ったところ、大学知的財産本部整備事業費という国の補助金が誘引となって大学の意識を高めたこと、また、専任教員が産学連携推進に取り組むことができる体制を構築していくことが重要であることが示唆された。 さらに、平成22年度後半には、産学連携の活発化が大学にもたらした影響について、共同研究件数の平均値と伸び率の高い上位30大学の自然科学系の大学教員1,000人に対してアンケート調査を実施した。この結果の詳細は平成23年度に取りまとめる予定であるが、産学連携の活発化がもたらした研究、教育、大学全体への影響について全体を概観すると、研究に対してはマイナスの評価(x=-0.08)、教育に対してはプラスの評価(x=0.05)、大学全体に対してはプラスの評価(x=0.16)となった(以上、-2≦x≦2)。また、自由意見記載欄で、基礎研究や長期的な研究の軽視といった面の問題意識が強く表れた結果となった。しかし、研究の内容や質に関して産学連携の影響をプラスに評価した25%の回答者の中には、産学連携によって基礎研究に立ち戻ったり(75%)、産学連携によって基礎研究の課題の解決につながったり(50%)した経験があるという回答者もみられ、場合によっては、産学連携活動が基礎研究の課題解決につながる可能性のあることも示唆された。
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