本研究は、国立高等専門学校新設時において各地で展開された高専誘致運動とその内実、およびその結果としての箇所付けと開校までの経過を分析することにより、誘致運動におけるメンタリティを考察しようとするものである。今年度は主に1962年度に開設されたいわゆる一期校を主な対象として研究を進めた。その成果は以下の通り。 1.一期校開設時における国会での審議経過を分析した。その結果、中央政府に対し激しい誘致運動が展開されたこと、この中で受け入れ条件としての地元負担が提供側も自明視するようになり、文部省にとってもこれを「寄付の強制」ではなく「地元の協力」と受け止めやすい状況となっていたことを明らかにした。 2.北海道、宮城、福島、群馬、静岡、岐阜、長崎といった一期校を獲得した(または一期校を目指した)都道府県の地方紙を閲覧し、高専誘致運動に関する記事を収集した。高専は産業構造の転換に寄与すると捉えられており、それにより誘致運動が激しくなっていったこと、その途上で県内での紛争、隣県間での競争が過熱していったことが明らかとなった。 3.国立高等専門学校の『周年記念誌』を収集し、その内容の分析に着手した。いくつかの記念誌では開設前の誘致運動について詳述しているものもあり、その記述が上記2.と呼応していることを確認した。 4.都道府県議会で高専誘致が議論の対象となった時期を特定するため、各『議会史』の逐年の議会概要に関する記述を閲覧し、その収集を行った。この作業により、より具体的な議論内容を把握するために県議会議事録を検索することが容易となった。
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