本年度は大学の質保証制度に関する多様な改革構想を抽出し、その実現状況を明らかにするための資料収集・整理関連の活動を中心に行なった。具体的には、(1)戦後の大学の質保証制度構築プロセスにおいて連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)の民間情報教育局(CIE)側からもたらされた情報を明らかにするため、国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAPレコードからCIE高等教育班関連の資料(1945~48年)の検索・収集、(2)日本側の中心組織としての大学基準協会所蔵資料(マイクロフィルム約10万コマ相当)の電子ファイル化、を行なった。電子化した大学基準協会所蔵資料は同協会のアーカイブス構築の際に提供することを予定しており、今後他の研究にも活用する道を開くものでもある。 他方、個別大学による制度改革提言を積極的に抽出する一環として、当時独自の大学制度改革構想を提起した数少ない大学の1つである北海道大学の大学文書館において同改革構想が作り上げられる過程に関連する資料の収集を行った。同時に、構想策定の中心メンバーが参加していたGHQ/SCAPの経済科学局(ESS)内の科学渉外連絡委員会および顧問として来日していたH.C.ケリー氏関連の資料を上記GHQ/SCAPレコードから収集した。また、教育刷新委員会の中心メンバーである南原繁氏関連資料収集の一環として、東京大学百年史史料室の資料調査を次年度(22年度)に行なうため、『東京大学百年史』の関連部分の分析を進めた。 なお、今年度は当初の計画通り、資料の収集に重点を置いたため成果の発表は一切行なっていないが、次年度8月開催予定の日本教育学会において口頭発表するための準備を進めた。
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