本年度も前半は昨年に引き続き、大学の質保証制度に関する多様な改革構想を抽出し、その実現状況を明らかにするための資料収集・整理関連の活動を中心に行ない、後半は成果報告書のとりまとめを行なった。具体的には、戦後の大学の質保証制度構築プロセスにおいて連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)の民間情報教育局(CIE)側からもたらされた情報を明らかにするため、国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAPレコードだけでなく、スタンフォード大学フーヴァー研究所のトレイナー文書(個人所蔵マイクロフィルムを借用)からCIEの高等教育班・地方教育行政班関連の資料(1945~47年)の検索・収集するとともに、北海道大学、関西大学の文書館への再調査等を行った。 先行研究では諸中等教育段階の地方分権改革と大学改革との連携を扱うことはほとんどされてこなかったが、両者の連携の可能性を探りながら資料の分析を進めていったところ、CIE独自の大学区構想や、旧制高等教育機関の新制大学への昇格の認定過程を設置認可ではなくアクレディテーションと捕らえていたことなどを示す新資料を数点発見することができた。 なお、今年度は調査研究活動により収集・分析した資料の一部を活用して7月に共著書『PDCAサイクル3つの誤読』(晃洋書房)を刊行したほか、10月の日本教育行政学会第46回大会課題研究において「大学評価の制度化の過程と政治」という表題で口頭報告を行なった。また、研究協力者の石渡尊子氏(桜美林大学)の協力も得て、年度末に研究成果報告書を作成した。
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