本研究第1年目である本年度の研究成果は、2つに大別される。 第一は、経営学、行政学、教育学領域における組織開発に関する内外の文献・資料の収集・分析であり、組織開発の理念、分析枠組み、視点等について深く掘り下げるとともに日本とドイツにおける組織開発への着目の経緯について明らかにした。経営領域において展開された組織開発が、行政領域を経て教育領域へ導入される過程について分析し、そこではどのように教育領域の固有性が認識されていたのかを明らかにした。 第二は、ドイツ全州における教育行政改革動向の分析であり、全州のマクロ分析と教育行政改革において顕著な特徴が見られる州のミクロ分析を行い、各州における教育行政改革の「共通性」と「差異」について明らかにした。「組織開発」の視点は、近年各州で展開されている「新制御(Neue Steuerung)」と呼ばれる一連の政策の中に盛り込まれていることから、その構成要素として把握されている、(1)学校査察(Schulinspektion)と他の外部評価手続き、(2)中央修了試験(zentrale Abschlussprufung)、(3)教育スタンダード(Bildungsstandards)、(4)学習状況調査(Lernstandserhebung)、(5)学校プログラム(Schulprogramm)の各政策について分析を行った。中でも「学校査察と他の外部評価手続き」は、州によって多様な展開が見られ、これにより教育行政機能が大きく変容しつつあることが明らかになった。
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