本研究第2年目である本年度の研究成果は、2つに大別される。 第一は、経営学、行政学、教育学領域における組織開発に関する文献・資料の分析であり、経営領域において展開された組織開発が、行政領域を経て教育領域へ導入されるプロセスを追い、その背景にある「新制御(Neue Steuerung)」の理念について整理した。そして、教育領域における新制御モデルは、行政領域におけるモデルの亜流として構想され、そのままの形で実施されることはなかったものの、契約管理という考え方、分権的な責任体制、アウトプット制御への移行、という新制御の核となる理念は、教育政策上採り入れられ、教育領域において定着してきたことを明らかにした。 第二は、ドイツ全州における教育行政改革動向の分析であり、本年度は特に、国家による学校監督機能と密接なかかわりを持つ外部評価(Externe Evaluation)に着目し、そのシステムの現状と課題について整理した。そして、「外部評価を担う組織」、「外部評価と学校監督との関係」においては州間で相当な多様性が存在しており、学校監督は、コントローラー、監督官、助言者のいずれなのか、あるいはすべての役割を兼ね備えるのか、制度上も研究上も十分に解明されていないことを提示した。さらに、現在導入されつつある学校と学校監督の間での「目標協定(Zielvereinbarung)」制度によって問題がいっそう複雑化しており、外部評価で得られた知見を今後の学校活動に活かすプロセスに密接に関わるこの制度により、学校監督システムがあらたな局面を迎えていることを明らかにした。
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