本研究最終年度となる本年度の研究成果は、以下の2つに大別される。 第一は、教育行政機関の果たす役割に対する認識とその変容の分析である。内的学校事項を扱う国家の学校監督については、その有効性をはじめとして、役割コンフリクトや負担過剰、任務の変動幅と多様性、教員との「構造的に妨げられた関係」等、以前から様々な問題が指摘されてきたが、個々の学校により多くの自律性と固有の責任が認められるのに対応し、任務の重点がコントロール・指示活動から、助言・協力的活動へと変化し、質の保証・開発の中心的な道具としての「評価」任務がいっそう重視されるに至っている。組織上も段階数が削減され、現在半数以上の州で2段階学校監督組織となっている。他方、外的学校事項を扱う地方自治体は、実際には、学校監督とかなり入り組んだ形で任務を分担しており、今日の「新制御」政策の進展により、学校設置者も協同で内容上の学校開発の責任を担うようになってきている。 第二は、各州における教育行政改革動向の分析であり、本年度は、外部評価(Externe Evaluation)制度と連動し、国家の学校監督機能を特徴づけることとなる「目標協定(Zielvereinbarung)」制度に着目し、全州における制度の概要とノルトライン・ヴェストファーレン州における事例検討を行った。大半の州において学校と学校監督の間での拘束力を有する目標協定手続きが存在しているが、その展開は多様であり、「相当な開発の必要性を伴う学校」または「標準以下の学校」のみ協定締結を課する州や、外部評価から独立した制度として構築されている州、学校を支援する活動として位置づけられている州など、制度的な幅が存在していることを明らかにした。
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