セルフ・スーパービジョンに関する理論研究を継続した。セルフ・スーパービジョンワークの構成理念として、(1)現実の社会構成主義的理解、(2)人間の全体的・統一的理解、(3)フィードバックの重要性、(4)現実から出発した未来志向としての目標定位、(5)選択可能性の拡大、(6)その時々の最上の行動の選択、(7)自己肯定の立場、の七点が明らかになった。この理念に基づくスーパービジョンワークは、教師のスーパービジョンコンピテンスの向上を目指している。このスーパービジョンコンピテンスは教師が内的対話を実行し、反省的に思考するスキル、行動の選択可能性の拡大と行動決断そして行動に伴う責任感の総体として理解される。それゆえ、全ての教師にさらなる向上が求められる。 セルフ・スーパービジョンワークを支援するために開発された25種類のワークシートを試行し、一部日本の教師に適合するように変形した結果、授業改善を志向する教師がワークシートの指示に従ってワークすることにより、(1)自己を客観化し、(2)思考の堂々巡りを防ぎ、(3)一定の結論を導き出すのに有効であることが明らかとなった。その結果、スーパービジョンコンピテンスが形成され、コンピテンスの向上と共に自己肯定感も強化されることが明らかになった。同時にまたこのコンピテンスの向上は、教師活動にとって多くの場面で有用であることも推測された。 以上のことから、多様な研修や教育スーパービジョンの機会をもつ教師も、また研修に参加するのが難しく、教育スーパービジョンの磯会がない教師も、自ら授業改善を志向すれば、セルフ・スーパービジョンを活用でき、スーパービジョンコンピテンスの向上を期待でき、授業改善に有用であることが明らかになった。
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