本研究では、(1)地域における幼稚園の「子育て支援センター」としての役割について、実態を把握し、その課題、問題点を明らかにする。また、(2)モデル園の様子を調査する。(3)調査の分析をすすめることで、現実にどのような子育て支援が可能であるのか考察することを目的としている。今年度は、幼稚園の子育て支援として考えられる内容として従来と同じく、(1)保育参観、(2)保育参加、(3)在園児の園庭開放、(4)未就園児の園庭開放、(5)子育て講演会等の啓発活動、(6)未就園児の行事への招待、(7)子育て相談、(8)子育て電話相談、(9)おやじの会など父親参加の活動等の項目について、チェック方式と自由記述欄を設けて兵庫県公立幼稚園の子育て支援の担当者を対象に調査した。また、子育て支援事業をすることで、(1)保護者の成長、負担、(2)教職員の成長、負担、(3)園の経営上及び保育上の影響がどうであるのか、従来と同じく4件法と自由記述で尋ねた。幼稚園481園のうち、291園(有効回収率60.4%)の回答から、まず、園長の回答が多かった2年前の調査と比較して、担当者による違いは大きくみられなかった。しかし、変化としては(8)電話での子育て相談が約8%増加、(2)保育参加、(3)在園児の園庭開放、(4)未就園児の園庭開放ともに6~7%の増加が見られた。また、(7)子育て相談も若干増加していた。一方、(1)保育参観、(5)子育て講演会等の啓発活動は、(6)未就園児の行事への招待、(9)おやじの会などは、変化がなかった。しかし、2年前よりも減少している活動はなく、徐々に活動を拡げている様子が見られた。また、4件法の結果から、これまでの子育て支援事業は必要性を感じながら、負担感があり、実施が難しいといったことは、従来と同様であった。加えて、「地域と一体となった子育て支援」や「地域における未就園親子とのつながりの重要性」といった、「地域」の用語が自由記述の分析(テキストマイニングソフトSPSS-PASW3.0.1)により、多くみられた。 これらの結果から、地域にふさわしい子育て支援のあり方としては、既存の幼稚園での保護者対応に加え、園庭開放、子育て相談事業を通して未就園児親子に働きかける活動が適切であることが示唆された。
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