研究概要 |
「学習する組織」を創造する校長のリーダーシップの在り様を明らかにするために、「学習する組織」に関する理論枠組みの検討と、学校変革のプロセスを記述した「ケース(事例)」の作成を目的として、以下のとおり実施した。 1.組織論・経営思想の展開における「学習する組織」論の理論的位置づけについて、「学校(組織)の有効性(School Effectiveness)」に焦点を当てて考察した。C.アージリスとD.ショーンの組織学習論やP.センゲの「学習する組織」論は、適応性・アイデンティティの感覚・現実をみきわめる能力を「有効性」とみなすオープンシステム論の延長線上にある。ただし、「学習する組織」論は、適応性ではなく、自らの未来を創造する能力を「有効性」ととらえることを明らかにした。 2.センゲの「学習する組織」論の限界を、ある小学校の学校改革の事例をもとに考察した。センゲは、現状と相対峙したビジョンとのギャップ(クリエイティブ・テンション)を学習の推進力ととらえる。しかし、事例において、校長や教職員は現状のなかにビジョンや使命を見いだしている。行為しながら現状の中に『思いや願い(aspiration)』を見出し,その『思いや願い(aspiration)』が現状のなかで『使命(mission)』へと高まっていくプロセスそのものが学習である。また、事例では,校長や教職員がシステム思考や自己マスタリー(クリエイティブ・テンション)という能力・スキルを身につけたから,学習障害を脱し「学習する組織」になっていったわけではない。むしろ,「学習する組織」になっていく過程で,校長や教職員たちの学習能力は高まっている。つまり,センゲの考え方は,因果関係が逆転していることを明らかにした。 3.ある中学校校長を対象として、3年間の学校づくりを「ケース」として作成した。
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