本研究の目的は、社会的に排除されたホームレスの自立支援における「生」を支える社会関係資本の構築について考察し、そのモデルを提示することである。最終年度の平成23年度は、以下の調査を実施し、報告書を作成した。 (1)自立者へのパネル調査を実施した。 就労自立もしくは生活保護受給による自立後の生活実態と関係構築の現状を調査することによって、社会的に排除された人々の社会的包摂のための支援とシステムの考察を行った。 2007年、就労自立を目的とした「自立支援センター北九州」の退所者62名にヒアリング調査を実施したのだが、うち12名にパネル調査を実施。62名中、死亡・行方不明入院などの理由で連絡不能のものが25名。連絡可能の37名も、体調不良などの理由で実際にヒアリングが実施できたのは12名であった。調査項目は、2009年の名古屋調査・2010年仙台調査と比較するために、職歴と家族関係の項目を合わせた。 その結果、(1)2007年の就労自立直後よりも就労率は低下し、(2)生活保護受給率が増加していた。また、(3)人間関係に拡がりは見られなかった。対象者が高齢化したこと、就労自立後の職が不安定就労であったことなどが理由に考えられるが、自立後も継続した支援が必要であることが改めて明らかになった。 (2)当事者と支援者で形成するコミュニティ 当事者組織「なかまの会」と支援者で共催する事業「ゴーイング・ホーム・デー」の分析から、自立後の継続した支援を通して、既存の地域コミュニティではない新たなコミュニティを創出していることがわかった。 (3)3年間の調査研究の成果を報告書にまとめた。
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