研究概要 |
研究の最終年度として、それまでの成果を国際学会(AIR,Canada,2011年5月)や招待講演、雑誌論文等で公表するとともに、国内大学への訪問調査や米国及び豪州の大学に関する追跡調査を進めた。国内では、日本高等教育学会(2011年5月)等に参加し大学マネジメント及びIRに関する情報を収集するとともに、先進的な教学改革が展開されている愛媛大学等でヒアリングを実施した(2011年9月)。米国では、「すぐれたナショナル・モデル」として評価の高いカリフォルニア州立大学ロングビーチ校に対象を絞り、第1年度及び第2年度の訪問調査の成果に立脚した分析を進めた。特に、今日の高等教育の重要課題の一つである質保証に焦点をあて、大学教育の質保証及びアカウンタビリティへの応答のあり方や、国家戦略と機関レベルの戦略的優先事項の関連、データ及び情報の収集・分析によって内部質保証を支えるIR機能の特質を分析した。豪州では、AAIRにて質保証及び大学マネジメントの最新動向について情報を収集するとともに(2011年11月)、バララット大学等これまでの訪問調査校についての分析をさらに進めた。これにより、大学マネジメントにおける上級管理職とIRの機能的連携に関する総合的な考察を行った。その結果、総じて大学マネジメントにおいては、重層的な組織構造の枠組の中で、時にはタスクフォース等の組織横断的な形によって、様々な階層の管理職が職責に応じたリーダーシップを柔軟に発揮していること、それらのリーダーシップが発揮される場面では、IR組織から提供されるデータや情報という客観性の高い根拠を組織内の「対話」のトリガーとして活用していることが解明された。以上の知見を、日本の大学マネジメントのあり方を検討する上での重要な示唆としてまとめ、最終成果報告書(冊子)の発行(2012年3月)を通じて広く社会に還元した。
|