本研究は、現在、ドイツ教師教育改革のなかで取り組まれている、教員の資質・能力の「スタンダード(基準)化」の試みに関して、その現状と今後の課題について分析・考察しようとするものである。 1年目の研究では、現状の概括的な調査を行ったが、結果は以下の通りである。 1. ボロニャ宣言に基づく大学改革、すなわち学士・修士課程の設置は、目途とされている2010年を迎えて、順調とまで言うことはできないが、着実に進行している。このような経過のなかで、現在ドイツ全体として、新課程で養成された教員が試補勤務に進む、あるいはそれを終了する段階に至っている。 2. この間、文部大臣会議によって、教育諸科学のスタンダード(2004年)、各教科のスタンダード(2008年)が策定され、それらは全州の教師教育において尊重されている。さらに多くの州で、州独自に、あるいは大学ごと、試補研修所ごとに独自のスタンダードが作成されている。ただしそれらの活用状況、成果等についての評価は、現在までのところ十分には行われていない。 3. スタンダードの内容は、教師が一般に備えておくべき「コンピテンシー」を定式化したものである。このコンピテンシー概念そのものに対する評価・検討、さらにはこのコンピテンシーと「反省的実践家」としての教師像および教員養成論とがどのような関係に立つのか、等の問題が提起され、多様な形態で議論が進められているが、それらの整理は今後の課題となっている。 4. スタンダードに対する教員、学生、試補教員等の評価・見解についても、その調査・検討は現在のまでのところ十分には行われていない。
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