現在、ドイツ諸州では、欧州統合に伴う大学制度改革に連動して、教師教育制度の構造が大きく変化している。共通の枠組みは、(1)学士・修士制度の導入、(2)第1次国家試験の廃止、(3)実習の強化、であるが、その内容は多様である。そして改革のテンポは、平均すると現在、新制度学生が修士課程に進学する段階あたりであり、旧来の「試補制度」の改革が進行中である。この改編のなかで、各州ともに学校種別および養成段階別の「スタンダード」を明確にする努力を続けている。 ノルトライン-ヴェストファーレン州では、新教員養成法に基づき2009年より年次移行で、すべての種類の学校教員の統一的な養成制度が実現しつつある。その際、学校種別に必修科目が標準化されており、また特に教育実践と養成教育の結合の強化がめざされている。具体的には、大学での学修開始以前に行われる「適性確認実習」、学士課程での「導入実習」および「教職実習」そして修士レベルでの「実習ゼメスター」の導入であり、その細部の形態は大学ごとに多様であるが、それぞれに各種実習の標準化が試みられている。 ブランデンブルク州でも改革が進行中であるが、現状では旧来の試補期間の訓練制度と修士課程での実践的学習の関係について、制度上の決着がつけられていない。また、この州の聞き取り調査からは、教員養成の各段階で「不可」と判定された学生(教員志願者)は、文部省に不服を申し立てるケースが多く、その意味でも「スタンダード」の確立が必要であるとの実状もあるようである。このことは、ドイツ全体についても言うことができる。
|