本研究は、グローバリゼーションの影響を強く受けながら、地方分権化とEUによる欧州統一化が同時に進む欧州地域に着目し、すべての地域住民に、人生のあらゆる段階で、学校教育、家庭、地域、職場など生活のなかに広がる多様な学びの機会を保障する「学習社会」と、それにもとづき経済活動につながる知識を創造する「学習経済」を地域社会で実現することによって、多様な学びが学習者個人および地域の社会・経済にもたらす様々な効果を質的に明らかにすることを主な目的とした。その際、19世紀以来の民衆教育の伝統と、20世紀後半に構築した社会人のリカレント教育制度を含む公的生涯学習の支援制度を基盤に、地域産業のイノベーションに成功しているスウェーデンの都市を事例として取り上げ、地域における生涯学習体系と生涯学習支援の構造についてもその詳細を明らかにした。スウェーデンの基礎自治体における生涯学習推進の事例調査として、21年度にネッショー市、22年度にヨーテボリ市、バーベリ市、エーレブロー市における地域の学習センターを中心とする生涯学習実践を取り上げたのに引き続き、23年度は9月にセーデルハムン市フレクシブル学習センターにおける現地調査を行った。また、スウェーデン学校教育庁、ストックホルム大学国際教育研究所およびスウェーデン労働政策・社会研究協議会において資料・情報の収集を行うとともに、Dr.Ann-Kristin Bostrom、Dr.Kenneth Abrahamssonらと、事例調査の分析の視点や今後の研究の発展について意見交換を行った。この研究の成果については、日本比較教育学会第47回大会ラウンドテーブルならびに北欧教育研究会(3回開催)において中間報告を行い、日本生涯教育学会第31回大会において自由研究発表を行い、同学会の論集(2012年11月刊行予定)に論文を投稿した。
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