子育て支援と親や子育てに関わる人々への学習機会の提供を、地域の子どもセンターを中心として提供するイギリスのシュア・スタート事業において、その複合的な機関におけるスタッフとして働くワーカー職の担う役割を明らかにしたうえで、その養成や生涯職能開発の仕組みについて検討することが本研究の目的であった。本年度は、前年度に実施した訪問調査及びスタッフへのアンケート結果を整理したうえで、センターへの追加調査を実施し、さらにワーカー職養成を担っている大学や、全国評価機構へのヒアリング調査を実施した。交付申請書に記入したように、政権交代が起こったために、訪問調査は2月後半から3月に実施した。本年度の研究の成果は以下の通りである。 (1)シュア・スタート事業の全体像をつかむことができ、政権交代後の動向についても把握することができた。すでに国家プロジェクトの段階から地方ごとの独自の運営に移行しており、新政権による予算の削減はあってもすべての子どもとその家族のための地域センターとしての機能は維持されることが確認できた。 (2)前年度に実施した、アンケート結果の分析を続けることにより、教育、福祉、保健、医療、地域づくりというような複合的な施設を運営する上で求められるワーカー職は福祉と教育を中心として複数の資格を持っていること、その資格は、イギリスにおける新しい職能資格枠組みにおけるレベル3以上が要求されており、それを持たないスタッフに対しては資格取得のための機会が提供されていることを明らかにすることができた。 (3)2月~3月に実施した訪問調査によって、シュア・スタート全国評価機構が本事業の推進に当たり果たしてきた役割を明確にとらえることができ、政策遂行と大学における研究との連携についての示唆を得ることができた。 (4)養成機関としてセントラル・ランカシャー大学を訪問したことと、他の高等教育機関に関する資料調査により、1大学における高度専門職養成の実態を始めとして、大学教員自身の研修と研究方法を知ることができた。 以上の成果を基にして、次年度は研究成果の取りまとめを行う予定である。
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