イギリスにおいて1997年に政権に返り咲いた労働党は、教育に関しては、第1期においては保守党の市場原理的改革路線を引き継いだ。ところが第2期目になると競争よりもむしろ協働の方に軸足を移していったと言われる。現労働党政権における教育政策に、「協働(collaboration)」の理念があるのである。しかしながら、リーグテーブルに基づく学校間の生徒獲得競争という準市場は厳然と存在している。したがって、イギリスの(初等・中等)教育制度は、市場原理的要素とパートナーシップ・協働的要素が「混在」していると見做せるのである。本研究は、このような課題意識の下に、イギリス(イングランド)を対象として、学校選択制度下において「競争」原理と「協働」原理が、如何なる構造の下に、どう作用しているのか、そして、そこに学校間の教員同士の協働を発揮させる可能性があるのかを検証しようとするものである。 4年計画の初年度である今年度は、以下のような研究を行った。(1)労働党政権による、学校間の協働・パートナーシップに関する政策の展開を把握した。(2)「学校連合(federation)」に関する実態・資料の収集を行った。(3)協働・パートナーシップの効果検証方法に関する先行研究を検討した。(4)「中等学校データベース」の充実:これまで整備・蓄積してきた「中等学校データベース」に、最新の情報(GCSEやKS2の成績、怠学率)を加えた。
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