本研究では、多文化市民社会の構築および見識ある行動的市民の育成に向けてオーストラリアの学校教育で取り組まれているシティズンシップ教育と多文化教育の新たな展開について、その理論、政策、実践を明らかにすること、および、多文化化の進む日本の学校における多様性への対応と市民性の育成に向けた取り組みとを明らかにすることを目的とする。 本研究の1年目である平成21年度は、日本およびオーストラリアにおけるシティズンシップ教育と多文化教育の現状を明らかにするために、次のような作業を行った。(1)文献資料収集・分析:オーストラリアを含む諸外国および日本におけるシティズンシップ教育、多文化教育に関する文献・資料を収集し、収集した文献・資料を基にオーストラリアおよび日本のシティズンシップ教育、多文化教育に関する先行研究を整理し、また、諸外国の理論の分析を行い、研究の理論的枠組みをより精緻なものとした。(2)オーストラリアにおける調査計画:オーストラリアにおいて、学校教育について直接的な権限をもつ各州政府レベルにおけるシティズンシップ教育、多文化教育の最新動向を明らかにするために、ビクトリア州およびニューサウスウェールズ州において、シティズンシップ教育および多文化教育に関する指針および学校のカリキュラム・フレームワーク等を収集した。特に、ビクトリア州の取り組みについて、収集した資料を分析し、新たに打ち出された地球・多文化市民性の教育について、その特徴を明らかにした。
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