本研究は、9.11事件以降、深刻化するィスラーム恐怖症(Islamophobia)に対し、イスラーム高等教育機関がイスラーム学の伝統を維持する一方、多宗教間・多元的価値の共存を促進する役割を担うべく自己変革する現代的動向を明らかにすることを目的としている。 本年度は、前年度の成果をもとにイスタンブールで開催された世界比較教育学会(2010年6月)および日本比較教育学会(2010年6月)で報告を行った。また、継続してイスラーム高等教育機関の分析枠組みを検討するとともに、マレーシア(2010年9月)およびインドネシア(2011年2月)において海外調査を実施した。前者については、宗教省・国家教育省・各イスラーム高等教育機関の資料収集を継続し、分析枠組みの精緻化を行った。後者については、マレーシアではクランタン州、インドネシアでは中部ジャワ州を中心にイスラーム高等教育機関に関する現地調査を行った。調査では、宗教教育関係部局、教育機関等を訪問し、関係者へのインタビューを実施した。これらの成果をふまえ、マレーシアからヤコブ・ビン・ユソフ(Yaacob bin Yusoff)氏(クランタン州スルタン・イスマイル国際イスラーム・カレッジ)を招聘し、国際セミナーを開催した(2011年3月)。研究の遂行にあたっては、インドネシア・スナンカリジャガ国立イスラーム大学教授ストリスノ(Strisno)氏、マレーシア・国際イスラーム大学教授ロスナニ・ハシム(Rosnani Hasim)氏から随時、分析枠組みおよび各国のイスラーム高等教育機関の傾向について助言を受け、情報交換を行った。
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