本研究は、1990年代半ば以降の日本社会において、とくに学歴と初期キャリアとの関連がどのように変化してきたのかを、実証的なライフコース分析によって明らかにすることを目的にしている。平成21年度は、2005年「社会階層と社会移動(SSM)」調査の職歴データを用いた分析結果を教育社会学会で報告した。また2005年SSM調査の研究書のために「学歴と初期キャリアの動態」と「高齢者の社会的地位と格差」の2章を執筆した(2010年10月刊行予定)。2009年1月~3月に実施したJGSS-2009ライフコース調査については、8月に職業経歴データのコーディングとクリーニングを行い、11月から分析を開始した。このデータを用いた論文として「戦後日本型ライフコースの変容-JGSS-2009ライフコース調査の研究視角と予備的分析」を作成した。さらに、JGSS-2009ライフコース調査の調査対象者に対して、3年後に継続的な調査を実施する場合に協力する意向があるかを確認した。現在のところ、約900名から協力意向を得ている。研究結果としては、女性の場合、若い年齢層でM字型就業パターンの左肩における非正規雇用の拡大が顕著にあらわれており、男性でも非正規雇用や転職が増加している。若い男女のライフコースが、複雑化している点がかなりはっきりと指摘できる。
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