本研究は、1990年代半ば以降の日本社会において、男女の学歴と初期キャリアの関係がどのように変化してきたのかを、実証的なライフコース分析によって明らかにすることを目的とした。研究では、主として2009年1-3月に実施したJGSS-2009ライフコース調査を分析した。主要な研究成果としては、1990年代後半以降、団塊の世代のライフコースを支えたシステムの行き詰まりを示す現象が目立ってきた。女性のライフコースでは、20歳代において、正規雇用、非正規雇用、無職に枝分かれし、さらに無職は専業主婦層に、就業層は未婚に分化する傾向が明らかであった。若い男性層でも、非正規雇用が増え、無職期間と転職傾向の高まりから、就業パターンが多様化していた。また1990年代以降の高等教育機会と社会階層との関係を詳細に検討すると、1990年代後半以降の大学進学率の上昇期になって、父学歴と大学進学の関係が強まっていた。このような研究結果と先進諸国で実施されてきたライフコース研究の知見とを比較すると、家族主義と特徴づけられた旧来の日本システムが新しいシステムに移行しているというよりも、「縮小」していると結論づけられる。なお、JGSS-2009ライフコース調査の調査対象者には、2012-13年度に継続的な調査を実施する場合に協力する意向があるかを確認し、約900名から協力の意向を得た。
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