平成23年度は、同22年度末に予定していた秋田県矢島高等学校及び旧矢島町調査が震災によってくりのべされており、この調査から開始した。また、研究全体を締めくくる都合、文献収集にも努めることとした。さらに、この3年間では事例の記述を行うまでに至らなかった京都府の間人(はざと)分校の調査にも当たった。 矢島の場合は、旧矢島町に産業教育(特に、牧畜を中心とする農業教育)に関する長年の蓄積があり、これが矢島高校と地域社会を連携させるキーポイントになっていることをうかがうことが出来た。もちろん、現在の矢島高校の教育課程は普通科であるが、地域住民が高校に寄せる期待が大きいという意味においてである。中学校とは校舎の構造が連携型になっており、教職員室も中・高同一室である。 間人分校の場合は「地域出身の生徒を呼び寄せる」構図はほとんど無い。それは、この分校が府内各中学校で「社会集団への適応に困難をかかえる」状態の生徒をむしろ積極的に受け入れているからである。いわゆる「へき地」に所在する分校であるが故に地元の受け入れ態勢もよく、ここで、4年間、昼間定時制に通学して社会性を習得出来るようにカリキュラムを工夫していることが理解できたところである。
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