中国西南の少数民族にみられる「子どもから大人へ」の移行をめぐる多種多様な儀礼は、成人集団に新しい成員を補充する役割を果たすと同時に、民族の文化を次の世代に伝承していく装置としても重要な意味を持つ。少数民族にとって、とりわけ自分の文字を持たない民族にとって、近代学校制度は必ずしも「民族自らの教育制度」として機能しないからだ。事実、民族の伝統や文化は「学校外の装置」によって伝承される。本研究では、4年間の現地調査を通して中国西南地域における成年儀礼の現状、成年儀礼が果たす役割と意義、成年儀礼の存続とあり方を巡る社会的力学の動向について明らかにした。
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