本研究の目的は中国の大学院における「専門職学位」プログラムの卒業生の社会的評価の実態を明らかにすることであるため、今年度は特に近年入学者数の伸びの大きいマネジメント、法律、教育などの専門分野を中心に、卒業者に対するアンケート調査を実施しました。大連、北京、上海と広州という四つの地域で選定された大学に依頼して、700部のアンケート質問紙を配布し、約387部の調査票を回収し、その調査結果の分析を進めている。 今年度は主にMBAを中心にデータ分析を行い、中国のMBA卒業者の社会的評価はかなり高いであることがわかった。中国のMBA卒業者の社会的評価の特徴として以下の点は上げられる。まず職場委託養成の卒業者が職場での地位上昇は顕著であり、早い時期に昇格したものはより多い。また、パートタイムより、フルタイムの卒業者が転職した者は多く、転職によってキャリア形成を果たしていることがわかる。さらに、MBA卒業者個人の収入アップが顕著に見られ、「専門職学位」の取得はより大きな経済効果をもたらしたことが確認できた。このようなMBA卒業者の実態に合わせ、彼ら自身にも取得した学位は就職、転職、昇進の際に高く評価されていることを認識している。しかし、パートタイムよりフルタイムの卒業者の方がより高く評価していることは明らかとなった。 このような社会的な評価に影響する要因を(1)キャリア形成における実際の達成度、(2)労働市場の需要、(3)組織の職能開発とキャリア形成の慣行、(4)卒業者に対する評価の一般的イメージ・ブランド効果の四つの角度から検討し、23年度5月の日本高等教育学会で成果を発表することに至った。
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