本研究は、日本・韓国・台湾・中国大陸・タイのアジア5地域の学生文化の比較研究、20年目の追跡調査を目的として3年計画で実施する。初年度(21年度)は、次の3つの研究作業を企画し、次年度に向けたアンケート調査の準備を行ってきた。 a.過去の本調査データの整理と再分析:1989年(日韓台の3地域)の予備調査を含む4回の調査データ(93-94年、00-02年、04-06年)を一括して処理できる電子データに変換して、統一的に分析出来るよう整理し直す作業を完了した。これらのデータに今回の調査データを挿入すると再分析作業できる状態にしている。b.関連する国際比較の調査研究文献の収集と分析:一つは、学会大会要旨集やCinii(情報学研究所)文献サービス等を利用して、アジア地域の学生生活に関して国際比較した調査の既存研究の文献リストを作成した。二つに、日本の学生生活の調査に関する既存研究の文献リストを作成した。それらの内、選択的に重要論文を収集し、その一部を抜粋し要約を作成した。それらに基づいて、本研究に資する既存研究の考証を行っている。c.国内外の研究協力者との調査協力体制づくり:本年度は、比較的情報収集の遅れていたタイと台湾について、現地協力者との研究体制づくり及び事前インタビュー調査を行い学生文化の現況調査した。タイでは2大学3人の大学教育関係者にインタビュー調査を行った。台湾では2大学で計10人の学生に直接インタビュー調査した。文献研究と現地調査の結果、大きく次の2点が発見的成果として浮かび上がった。1.学生文化の理論的枠組みに、新たに8つの下位文化を設定する必要があること。25学生文化と若者文化の重複度に注目すること。つまり、若者文化と学生文化の重複傾向の大きい日本と、重複度が小さいタイ・台湾の違いが仮説的に指摘出来ること。これらの発見的事項は、次年度のアンケート調査の調査票作成に活かす方向で既に調査票のサンプルを作成に入っている。
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