1990年代に来日した中国人児童生徒達は、いま次々と日本で進学・就職・結婚している。本研究では、ある中学校校区で中学校に通っていた約164人の中国人生徒の進路を追跡調査する。そして、これらの生徒達が日本で過ごした十数年間を、計量分析とライフヒストリーを併用しながら、「小さい頃から日本にいる者とそうでない者」「農村から来た者とそうでない者」という2つの切り口から立体的かつ重層的に描き出し、一冊のモノグラフに書き上げる。 本年度は、主としてインタビュー法を用いながら、日本で成人した中国帰国者の職業選択と配偶者選択を中心に調査した。 その結果、職業選択については、学歴が高い者ほど、また、最近成人した者ほど、中国人であることや中国語を活かした職業に就く傾向があることが分かった。 一方、配偶者選択については、たとえ幼少の頃から日本で暮らしていて中国語が流暢に話せない者であっても、比較的若い年齢で、中国に住んでいる中国人と結婚する者が多いことが分かったし、中国から呼び寄せられる配偶者が男性の場合、日本語ができる側が妊娠している間、日本語ができない側が就労して家計を支えざるを得ないという事態が生じ、このことが家計を苦しくさせることがあるということも分かった。 また、本年度は、関東で暮らす中国残留孤児二世の方々と知り合うことができた。彼(女)らの多くは1980年代に来日し、日本の小中学校に編入した。彼(女)らが成人した1990年前後は、日中間の人や物の往き来が今ほど盛んではなかった。このため、中国と関係のある職業に就けている者は少なく、日本で知り合った一般の日本人と結婚した者も多いように思われる。本研究は関東の中国残留孤児二世達を対象としたものではないが、今回彼(女)らと知り合えたことは、1990年代に大阪に定着した中国残留婦人三世達を相対化する上で大きな意義があった。
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