多くの途上国にとって、教員の汚職・不正行為は国家の健全な発展を阻む一要因となっている。本研究は、主に質的研究方法を用いて、カンボジアを事例として教員をめぐる不正行為の実態を調査し、その背景とメカニズムについて考察することを目的とする。 初年度である平成21年度は、現地調査の準備作業を行った。第一に、文献及び資料を収集・整理し、汚職・不正行為を含めたカンボジアの教員に関する問題点について広く分析した。この分析を基に、調査項目について検討した。なお、カンボジア教員を取り巻く課題については、国際教育発展・協力研究会、及び、日本比較教育学会で発表している。第二に、先行研究を批判的にレビューし、本研究の調査方法について考察した。特に、質的研究方法のひとつであるライフストーリー調査の有効性と問題点について検討した。第三に、カンボジア人研究者からなる現地調査チームを編成し、具体的な調査方法について議論を重ねた。「不正行為」という公にしにくい問題を扱うことから、調査者及び調査対象者の安全が確保されるよう配慮する必要があり、現地調査チームと調査方法の注意点について話し合った。また、現地調査チームの助言を得て、聞き取り調査による調査項目の精緻化を行った。以上の準備作業を経て、予備調査として、教員のライフストーリー調査に取り掛かっている。 なお、本研究は10月末で一時中断しており、本年度に計画していた予備調査は次年度に行われる予定である。
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