多くの途上国にとって、教員の汚職・不正行為は国家の健全な発展を阻む一要因となっている。本研究は、主に質的研究方法を用いて、カンボジアを事例として教員をめぐる不正行為の実態を調査し、その背景とメカニズムについて考察することを目的とする。最終年度に当たる今年度は、以下の研究活動を行った。 1.関連資料の再検討を行う。香港大学比較教育研究所の協力を得て、カンボジアの補習塾と不正行為の関連について、新たな資料を収集した。また、援助団体、特に反汚職NGO団体の報告書を広く検討した。 2.予備調査と本調査で得られなかった情報を得るために、12月22日―12月30日の期間、フォローアップの現地調査を行った。現地調査チーム5名で2チームに分かれ、プノンペン市、カンダール州、バッタンバン州の3か所で調査を行った。16名の現職・退職教員および援助関係者に、1-2時間の個別・グループインタビューを行い、90年代以降の開発援助と不正行為の関係についての情報を中心に収集した。また、現地の学校の参与観察も行った。長期にわたり現場で働く青年海外協力隊員らからも、教員の汚職の実態について多くの情報を得た。 3.収集したデータのコーディングを質的分析ソフトで行った。 4.教師教育学会において、教員養成の視点からの不正行為に関する分析を報告した。また、ロンドン大学教育研究所教授陣の依頼を受け、大学院生対象の教科書を研究で得られた知見をもとに分担執筆した。
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