初年度の計画に沿って、本研究の課題である、(1)インドの各州下の各県で実施される初等教員養成の予備調査と第一次調査をマハーラーシュトラ州オスマナバード県で実施し、(2)当該分野専門家との討議を継続しながら第二年度の調査環境整備を行った。 2009年9月の予備調査での簡略なアンケート調査から、初等教員養成課程(12年間の初等・中等教育終了後二年間の課程)を持つオスマナバード県の県教育研究所では約四割の学生が高等教育を受ける第一世代であること、後期中等教育段階で数学を含む理科系を修了した者が約三割であること等の結果を得た。2010年2月末から3月初旬の第一次調査では、学生・教員双方への予備的インタビューから、近年の初等教員養成機関の増加、教育実習までに養成課程で行われる学修内容などを知ることができた。この期間のアンケート調査は現在分析中であるが、上記養成所を第一希望として入学した学生が相当数あることなど、同地域での教員養成・教職に関する特徴をさらに検討するための手掛かりとなる。また、教員の教授方法や学生への接し方、学生の授業態度などについて、研究所内での授業と教育実習を観察することができた点は、二年度目以降の研究で、養成課程に入学した学生がどのように初等教員となるかを継続して観察するための貴重な情報となる。インドは現在、独立(1947年)以来の目標であった初等教育普遍化を達成しつつあり、「質的充実」を伴った学校教育を担う、充分な資質と創造力のある初等教員養成が議論されている。そして、同州が2004年度から実施している新カリキュラムでの初等教員養成はその評価を必要とする時期に入りつつある。本研究は、インドの初等教員養成の最新情報となるのみでなく、現在各国で議論されている教員養成の諸問題の改善への糸口ともなる。 今年度の研究成果として、東海大学短期大学紀要第43号(ISSN:0386-8664)に、「インドにおける初等教員養成:マハーラーシュトラ州オスマナバード県の事例から」(英文)の掲載許可を得た。
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