本年度は最終年度に当たるため、研究全体の総括やこれまで実施してきた調査結果の再分析、補完的な調査の実施に力点が置かれた。研究全体の総括としては、研究発表欄に記載されている単行書(葉養正明著『人口減少社会の公立小中学校の設計-東日本大震災からの教育復興の技術』、協同出版、平成23年8月)を刊行した。また、今年度の研究は、平成23年3月11日の東日本大震災発生をうけ、本研究テーマに基づく研究活動を、被災校の実態解明や学校復興と絡めて進めることとした。東日本沿岸部自治体の人口減、就学人口減の状況は全国水準よりも厳しい状況にあり、教育復興や学校復興は小中学校統廃合問題と関係せざるを得ないからである。東日本大震災による学校被災の実態や状況については、研究発表欄に記載されるジャーナルを通じて、適宜公にしてきた。 補完的な調査としては、当初長野県の統合中学校生徒対象に、三回目の意識調査(学校統合に伴う生活や学習の環境に関する調査)を予定していたが、上述の東日本大震災の被災地調査で旅費等が乏しくなり、これまで二回の調査データの再分析に代えた。 上記単行本にも記載しているが、就学人口減少に対応しながら、かつ、学校廃校の社会的費用を最小化する学校統合モデルとしては、"schools as community facilities"(学校施設の複合化)が考えられる。今年度は震災復興との関係もあり、ニュージーランドのウェリントン、クライストチャーチに訪問先を変更した。ニュージーランド教育省や学校では、30時間に及ぶヒアリングを実施し、学校統廃合を含む教育復興計画とともに学校再生の考え方について情報収集が行われた。
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