研究概要 |
本研究が対象とするものはドローイング的表現による抽象絵画である。学校教育の美術では具象傾向を重視することから、抽象絵画を描くための段階的なトレーニングは行われていない。また作品理解のための効果的な鑑賞方法もほとんど検討されていない。本研究は、そうした抽象絵画に関する問題への対応として、表現および鑑賞を一体化させた制作のためのトレーニングの検討、および表現サンプルをデジタル化し、そのデータ整理を行うものである。 研究初年度の本年は、主として文献整理と、表現サンプルの作成と分類およびデータのデジ1,ドローイング的表現に関する文献整理としては、カンディンスキーにおける絵画の造形要素に関する著作内容を詳細に検討した。特に、そこで述べられている基礎平面と線が持つ視覚心理的な特質に着目した。2,ドローイング的表現の収集では、絵の具や筆などの描画材(実材)を使用したドローイング的表現実験を行い、約200件の表現サンプルを収集した。また、過去に収集したデータと合わせて約400件をデジタルデータ化した。3,表現指導のための「鑑賞+演習プログラム」作成としては、(1)カンディンスキー、(2)アンフォルメル、(3)カラーフィールドペィンティング、(4)ポストペィンタリーの4種類の抽象絵画スタイルに関して、各30分の鑑賞と演習をセットにしたプログラムを作成した。それを学生に向けて試行した。研究発表の面では、「絵画制作におけるイメージ形成の指導(1)」の題目の論文中、「(3)その後の崇高表現」において抽象表現主義と象徴との関係の教材化に関して述べた。
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