研究概要 |
研究初年度の昨年は、主として文献整理と表現サンプルの作成と分類およびデータのデジタル化を行った。また、指導のための演習+鑑賞プログラムを作成し授業において試行した。 研究2年目の本年は、(1)学生が演習の際に作成した約100件のドローイング的表現のサンプルを追加収集しデジタルデータ化した。その後、これまで収集したデータを一括し、素材による表現の相違を分類整理する作業を行った。(2)カンディンスキーの基礎平面およびアルンハイムによる視覚心理的な分析結果を整理・要約し、その内容をもとに収集した表現サンプルを検証した。そこでの考察結果は「非再現的ドローイングにおける視覚的力動性の検証」として大学紀要において公表した。(3)表現指導のための「鑑賞+演習プログラム」作成では、昨年作成した解説内容を改善し再度授業において試行した。この内容は、VTRに記録しWEBを通じて視聴可能にした。(4)ニューヨーク近代美術館MoMA,メトロポリタン美術館近代絵画部門等において抽象絵画の展示状況確認および額装方法を考察した。 本研究の主な目的は、抽象絵画を描くための段階的なトレーニング、および作品理解のための効果的な鑑賞方法の検討である。この2年間の考察の中で、表現および鑑賞を一体化させて指導することの重要性がより明確化した。今後は、以下3種のアプローチを融合させる指導方法の検討を行いたい。(1)素材・形式によるアプローチ(絵の具・用具などの制作面)、(2)理論的アプローチ(史的展開の理解)(3)内容的アプローチ(視覚心理的理解)。これら3種のアプローチを一体化させた指導を行うことで、抽象絵画の本質的な理解に接近することが可能になるものと考える。
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